§スリランカ紅茶の旅§
1997・10・31
 成田空港から直行便で約十時間、スリランカ最大の都市コロンボの南にある空港に着いたのは現 地時間で夜の八時過ぎだった。時差は三時間程度なので苦労する事はない。
 飛行機を降りた瞬間、何とも言えないスパイシーな香りが、体全体包み込む。紅茶屋の私にとっては 、それだけで感動さえ覚えた。 手続きを終え空港の外に出ると、乗客のほとんどは右側へ向かった。
そう、日本人のほとんどはこ の国のリゾートが目的なのだ。われわれ紅茶関係者は左側に向かい,用意さ れてあったバスに乗り、一日目はコロンボ市内のホテルに泊まった。
 二日目は紅茶の産地であるキャンディに向かった。キャンディも人口約十万人の主要都市。標高約 五百bで紅茶の産地としては低地の方だ。 キャンディ産紅茶は味はライトで甘く、水色(すいしょく)は美しいオレンジ色だ。水色だけなら 世界一と評価されている。それに地名が何とも愛らしく、よく"あめ"のキャ ンディと間違えられ、私の店でもよく「どんな"あめ"の味がする紅茶ですか?」と勘違いされる。
 バスにゆられ三時間ほどしてふと気がつくといつのまにか辺りは険しいジャングルになっていた 。気分も無意識のうちに緊張している。道もだんだん細くなり凸凹も多くなり 酔いそうになっていたところ、急に明るくなったと思うと、一面紅茶畑が広がっていた。畑では、 サリー姿の女性が大きなカゴを背負って茶摘みをしていた。私たちは急いで バスを止め、茶畑に歩み寄った。だれに許可を取る事もなく、身ぶりで"茶摘みをしていいですか ?"と確認をすると、彼女たちも気さくにジェスチャーで答えてくれる。 しかし足元が滑って茶摘みどころでない。立っているのが精いっぱいだ。それくらい急な斜面に お茶の木はあるのだ。まして足元は赤土、私のシューズも、あっという間に茶 色になってしまった。
 しかし、女性は皆素足である。その姿に私は考えさせられた。この時代、この世の中に、なぜ? スリランカに来て、感動の連続だったが、素足姿の女性たちと出会った瞬間、紅茶に対する私の 考え方が変化して行くのを、自分でもはっきりと感じる事ができた。ふだん、気軽に飲む紅茶に も強力なスパイスを加えたような、そんな気がした。


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