§紅茶・ポット サービスの意味§


1998・ 3・ 6
 「渋くない!」 「三十分位たっているのに甘くなっている!」などの声が度々店内から、 厨房(ちゅうぼう)カウンターまで、聞こえてくる。
 紅茶って、今まで、渋いとか、時間がたつとまずくなっていくものだと思っていたのだろう。 ポットの中には、確かに茶葉が入っているし、目の前にポットが出されてから確かに時間もたっている。 それなのになぜ、と不思議に思う人がほとんどだった。
 当店では、ストレートティー(ブラックティー)の注文を受けると、お客さまのテーブルには、砂時計も出す。 ティーコジ―にくるまれたティーポットと同時に出し、「砂が落ちましたら、紅茶を注いで召し上がって下さい」。
 実は、おいしい紅茶を飲んでいただくため、お客さまに協力していただいている。待つ事三分、 この間に、紅茶の味がつくられるのである。
 紅茶の成分は、主にカフェインとタンニンだが、さまざまな成分が結びついて、 美しい水色(すいしょく)や味を作り出すのである。
よく砂が落ちる前に紅茶を注いでしまう光景も見られたが、これでは、成分単体の苦みや渋みを感じてしまい、 絶対おいしく味わえない。
 三分たって紅茶を注ぎ、まず香りを楽しむ。一杯目の香りを楽しんでいる間にも、ポットの中に残っている紅茶は さらにおいしい味を作り出している。この二杯目に、本当の水色と味を楽しむのだ。ポットの中には、 まだわずかだが紅茶が残っている。三杯目を注いで最後の一滴までしぼり落とす。飲んでみるが、 おせじにもおいしいとは言えない。
が、この最後の一滴を「ベスト・ドロップ」と呼び、イギリスなど紅茶の先進国の人たちは称賛しているのである。
つまり、紅茶をたて始めてから香りや味や美しい水色まで楽しませていただいた上に、楽しいひとときを過ごさせていただいた、という感謝が込められているのだ。 三杯目は確かに飲みづらいが、ちゃんと楽しむ道具がある。ホットウォータージャグといい、 差し湯用のお湯だけを入れる道具である。これを利用して楽しむのである。これは一杯目から使用してもマナー違反ではない。 あくまでも自分の好みでティーカップの中で味を調整すれば良いのだ。
 つまり紅茶というものは、ティーポットで楽しむものなのであり、それもちゃんと一杯ずつに深い意味があるのだ。


〜エッセイの目次へ〜
 

トップページへ