§南極氷と紅茶屋§
2005.3.22
『南極大陸は、約1億5千万年前にゴンドワナ大陸(南米、アフリカ、インド、オーストラリア、南極)から分離移動して出来たといわれています。大陸上には、平均2,450mもの厚い氷で覆われ、その広さは周辺の棚氷を含めると、日本の面積の約37倍。南極地域の氷の量は地球上の90%を占め、もし、この氷が溶けてしまうと地球上の海面が70〜90mも上昇すると見積もられています。「南極の氷」は大陸に長い年月をかけて降り積もった雪がその重みで圧縮されて氷となったものです。一年間に成長する氷の厚さは10pほどです。大陸中央で出来た大陸氷(氷床)はその重みで、大陸周辺へ移動して海に流れ出し氷山となるまで数万年もかかるのです。』
〜第45次南極地域観測協力行動案内より〜
 10月中旬、ハーヴェストに南極からひとつの荷物が届いた。
 顔なじみの宅配の方も、いつもなら荷物を確認し、印を受けて帰って行くのだが、この日ばかりは開口一番「“南極の氷”って書いてますよ!!すごいですネ」と驚きながら手渡してくれた。
 私も初めはピンとこなかったが、送り状を確認すると、やはり“南極氷”と書いてある。その重量は軽く10kg。湧き上がる好奇心を抑えながら、少し湿ったダンボールを開いたら、むきだしの氷が“ゴロン”とひとかたまり、ライトの光でキラキラ輝いていた。南極という生活の中で全く無縁、ましてやそこに行く、などとは私の人生ではありえない場所から届いた氷を前に現実でないような夢心地がした。
 次の瞬間、違う意味での感動がわいてきた。この氷を送ってくれたのはハーヴェスト開店以来のお客様「織江さん」だ。
 半年前のある日、織江さんに「マスター南極の氷いりますか?」と尋ねられた。氷と言われて、すぐ「アイスティーにいれたら最高でしょうネ!」と返事をした。「じゃ、今度南極に行ったら、送りますネ・・・・」という会話をしていたのである。すっかり忘れていたが、織江さんは覚えていてくれ、本当に氷を送ってきてくれたのだ。
 氷を見つめていると自然に9年前のクリスマスパーティーを思いだした。エッセイにも書いたが「底なしティーパーティー」の主役の一人だ。いつも素敵な彼女(現在の奥様)と共に、パーティーやセミナーに参加してくれた。そんな彼は海上自衛隊に従事し、この9年の間に三沢基地に勤めていた。それでも機会がある毎に紅茶を飲みに来てくれ、夏祭りシーズンには必ず来店し、紅茶とフードを食べにも来てくれていた。
 すぐに横須賀にいた彼に連絡すると、また「砕氷艦しらせ」で11月14日から来年4月まで行くとの事。次は南極の地で、紅茶を楽しんで下さいネ!とメッセージを入れ、ウバ茶とヌワラエリア茶のハイグロウンティーを彼に託した。
 届いた南極氷の半分はディスプレイとしてショップのカウンターに設置し、来店されたお客様に自慢して残りは、スタッフやお客様へおすそ分け。私ももちろんアイスティーで楽しんだ。南極氷特有の空気のパチパチとはじける音をBGMに織江さんとの開店以来の思い出がエッセンスとなって飲むアイスティーは、世界一おいしい味だった。
 織江さん、氷と思い出を本当にありがとう!心から紅茶屋をやっていて良かったと思います。
 先週、南極に旅立つ前に寄ってくれた折、織江さんが「マスター、今度は今回の倍くらい送りますネ」と言ってくれた。「じゃぁ次は、南極氷アイスティーメニューを準備しておくよ!!」と彼を見送った。

紅茶専門店ハーヴェスト  松川
南極画像提供:『 「世界の不思議?」探索の旅 』


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